SaaS企業におけるパートナーセールスの要諦
HubSpot、Zendesk、Atlassian といったSaaS企業では、パートナーセールスを機能させ、急成長を実現しています。Atlassian は、全世界に400社以上のパートナーがおり、パートナー経由の売上は全体の4割ほどを占めています。 本記事では、SaaS企業におけるパートナーセールスに焦点を当て、考察をまとめます。
パートナーセールスとは?
パートナーセールスとは、製品を自社で直接販売する方法ではなく、代理店などの他社を通じて販売する方法を指します。 例えるなら、自社製品をデパートに持ち込むようなものです。デパートには多くの顧客が訪れ、あなたに代わって優秀な販売員が製品を販売してくれます。パートナーセールスは、パートナー企業の既存組織や販売網を活用する方法といえます。
では、パートナーセールスにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
パートナーセールスのメリットとデメリット
<メリット>
効率が良い
様々な市場に信頼できるパートナーがいれば、各パートナーの既存組織や販売網を活用して、効率的に販売していくことができます。自社で新たに市場を開拓する場合に比べて、コストを抑えられる可能性が高いです。検証しやすい
自社で新たに市場を開拓しようとする場合、市場調査や専任スタッフの配置・教育などに大きなコストがかかります。しかし、パートナーが自社にとって新しい顧客層を抱えている場合、製品機能やマーケティングキャンペーンなどを試しやすくなります。信頼を得やすい
自社のSaaSを新たな市場や業界に展開する場合、その業界での信頼はゼロの状態です。しかし、パートナーがその市場や業界で有名かつ信頼されている場合、そのパートナーが扱う製品も信頼できるものとして認識されます。
<デメリット>
契約あたりの収益が減る
パートナーに対しては販売手数料を支払う必要があるため、契約あたりの収益は減ります。また、パートナーの教育やフォローにも多少の時間とお金がかかるでしょう。しかし、自社でセールス担当者を採用したり、広告を出す費用と比べたら、そこまでのデメリットではないかもしれません。コントロールしづらい
パートナーが営業成果をコミットしていない場合、パートナーから得られる収益の予測はしづらくなります。また、どのようなセールストークをしているかなど販売プロセスが管理しづらくなる側面があり、契約上の問題を引き起こす可能性もあります。ブランドイメージを低下させる
パートナーが強引な販売手法を用いていたり、社会的な規範を逸脱していた場合、あなたのSaaSの評判やブランドイメージが落ちてしまう可能性もあります。
次に、パートナーセールスのメリット、デメリットを踏まえ、パートナーセールスを本格的に導入し、機能させたい場合は、どうすればいいのか見ていきましょう。
パートナーセールスを導入するには?
STEP 1. 自社で売る
パートナーセールスを取り入れるにあたっては、まず直営業で製品を売ることができなくてはなりません。リリースの初期段階では、自社のセールス担当者ですら製品の何が顧客に好評なのかを理解できていません。また、自社において販売プロセスが確立されていなければ、パートナーも販売プロセスがわからず、パートナーセールスはうまく機能しないでしょう。
STEP 2. 理想のパートナーを定義する
どのようなパートナーと組むことが、双方にとって最適かを考えます。例えば、自社のSaaSと親和性の高い別製品を販売している企業はパートナーに適している可能性が高いです。 理想の顧客像を明確にするように、業界や事業内容含め理想のパートナー像も明確にするといいでしょう。
STEP 3. パートナープログラムの内容を決める
販売手数料含め、プログラムの詳細を決定します。教育用コンテンツが必要な場合はそれらも準備し、パートナーをどのようにサポートしていくかということについても検討しましょう。
STEP 4. パートナー候補に連絡を取る、募集する
もし、理想のパートナー像が明確になり、パートナー候補の連絡先もわかるようなら自らパートナープログラムについて案内しましょう。もし、連絡先など具体的な情報がわからない場合や、より多くのパートナーと連携していきたい場合は、パートナー募集ページを立ち上げるのも手でしょう。
冒頭で紹介した急成長SaaSにおいても、パートナー募集ページが用意されています。
・HubSpot
https://www.hubspot.jp/partners
・Zendesk
https://www.zendesk.co.jp/partner/
・Atlassian
https://www.atlassian.com/ja/partners
パートナーセールスを機能させるには?
・サポートを充実させる
パートナー契約を結んだら終わりではありません。むしろ、契約を結んでからが始まりです。パートナーに自社のSaaSを正しく理解してもらえるように手厚くサポートします。製品の特徴やユースケースの理解を促すために必要な資料や動画を用意したり、ウェビナーを開催するといいでしょう。
・定期的に連絡を取る
最新のリリース情報や今後のアップデート予定など、パートナーには積極的に情報を提供します。 また、パートナーと連絡が取りやすいように専用のSlackチャンネルを作ったり、Facebookグループを作るのもいいでしょう。実際にオフラインで交流する場として、パートナー向けのイベントを開催する方法もあります。
・実績に応じた報酬プログラムを用意する
パートナーを一括りにするのではなく、販売実績などに応じてランク分けをする方法もあります。パートナーセールスを有効活用している急成長 SaaS においても、パートナーをランク分けし、それぞれのランクごとに手数料や受けられるサポート内容が異なっています。
おわりに
パートナーセールスの成否を判断する上では、パートナー経由でどのくらいの売上が得られているかはもちろん、その売上を得るためにパートナーに対してどのくらいの費用を投じたかを注意深く観察しなければなりません。 例えば、同じ売上を得るにしても、パートナーのトレーニングに大きな費用がかかってしまえば、収益性は悪化します。
パートナーセールスを成功させるためには、自社で提供するSaaSが、シンプルで理解しやすく、パートナー教育に大きなコストがかからない、パートナーにとって売りやすい必要があるでしょう。 そして、カスタマーサクセスと同じようなスタンスで、パートナーも大事な顧客として扱い、パートナーの成功のために最善を尽くしていくことが重要です。
パートナーセールスをうまく機能させることができれば、SaaSの成長を加速させることができるでしょう。