デザイナーの判断を手助けする?ジャムの法則とは
こんにちは。デザイナーの畠です。
普段から色々なプロダクトに触れ、良いところを見つけ、それをパターンに分け、抽象化し、普遍的な概念として持ち出せるようにすことで、普段のデザインに活かせるように努力しているデザイナーも多いかと思います。
しかし、直感的に良いと思ったとしても、何故良いと思ったのかの推測や言語化が難しいこともあります。そこで、人はこうした時にこういう行動をとるといった心理学や傾向を知っておくと、理解や判断の手助けになることがあります。
ジャムの法則について
本記事ではコロンビア大学のジーナ・アイエンガー教授による「ジャムの法則」をご紹介したいと思います。
詳しくは下記の動画でも紹介されていますので是非ご覧ください。
一言で言うと、「人は、選択肢が多いときには、少ないときよりも判断を下しづらくなる。」というものです。
ジャムの法則は、スーパーで6種類のジャムと24種類のジャムを用意した時に、それぞれジャムを購入した割合は、6種類揃えたテーブルの場合は30%、24種類のテーブルではなんと3%、と非常に大きな差が開いてしまった結果から導きだされた法則です。
選択という行為が顧客のストレスになり、いかに必要ない選択肢を省いていけるか。
これはデザインを考える際においても応用しやすい重要な法則だと私は考えています。
ジャムの法則がどういった部分で判断のをサポートしてくれるのか。コールセンターシステムの CallConnect の改善を例にご紹介いたします。
応募フォーム
応募フォームにおいて項目数が多すぎると、離脱の原因になると言われていますが、これも選択のストレスが影響していると言えます。
入力内容が多いのは選択のストレスか?と言われても、しっくり来ないかもしれません。しかし、複数ページに渡り質問や業種まで多数の入力をしないといけないとわかれば、入力しようかやめておこうかユーザーは考えています。つまり入力内容が多いことは応募するかしないかの選択を考えることが、ストレスになっていると言えます。
応募フォームは最も簡単で、効果の高い改善策です。もし現在のサービス上で、入力項目になくても良い項目があるのであれば、省略してみましょう。
CallConnect のトライアル申し込みフォーム
項目数を減らし、トライアル数のアップにつなげた。
ボタンの文言
ボタンの文言もユーザーにとって、大きなストレスになり得ます。
もちろん必要ないボタンが選択肢に含まれていれば、ストレスですが、選択肢が1つや2つしかない場合でも、ストレスになり得ます。
それはボタンを押した時にどうなるか、その先に起こるアクションがすぐにイメージできない時です。選択したとあったとしても何が起こるかわからない、そんなボタンがいくつもあれば、ユーザーはそのサービスに大きなストレスを抱えることになります。
ボタンの装飾
また、これは大きな判断に大きな影響を及ぼすとまでは言えないのですが、例えば”保存”と”キャンセル”というボタンがあったとします。
どちらも同じ形状で、保存は黄色、キャンセルはグレーを背景に敷いていました。しかし、途中から、キャンセルのボタンのグレーを白に変え、よりシンプルな装飾にしました。
これはなぜでしょうか?
対等でなくても良い。
まず最初のデザインでは、キャンセルボタンもそれなりの存在感があり、ユーザーからすると、ボタンが2つあるということで、どちからを選択していかなければなりません。
保存とキャンセルはほとんど対等の関係にあります。しかし、例えば入力フォームで入力をした後にキャンセルをする行為はそこまで優先順位のあるものでしょうか?
ユーザーが自分で進んだ先では、キャンセルは気が変わったり、やっぱりやめようといったときにのみ必要となります。基本は”保存”であえてキャンセルしたい人のために横に添える程度でも良いのではないでしょうか?そうすることで、視覚的にもほぼ一択となり、選択のストレスを軽減し、何となくでも保存を押せば、次のフローに進んでいける。しかしながら横にキャンセルボタンを添えることで、キャンセルしたい人がいても気づくことのできる適切な主張のボタンをつくることができるのです。
この事例だけでは大きなアクション率に変化はみられないかもしれませんが、デザインの設計の軸に、選択のストレスを少しでも減らそうという意識によって、サービスの細かい部分を地道に改善し続けていくことが重要です。似たようなサービスでも大きく使い勝手が違ってくるでしょう。
まとめ
デザイナーにもロジックで説明を求められることが多くなっているように思います。
しかしながら数値を用いた提案は、普段からユーザーのデータ触っているなどでなければ、難しいこともあります。
また、応募フォームを少なくするとコンバージョン率があがるということは言われていますが、結果としての数値だけではなく、人の心理としてどういったものが影響しているといったことが推測できるようになると、普段からユーザーの気持ちを考えているデザイナーの心強い味方となるでしょう。
そういった傾向や実験、人の心理について学ぶことは色々なデザインを見た時に、プロダクトが何故そのデザインなのかを納得できる機会が増え、自分の判断の拠り所にもなっていきます。「インターフェイスデザインの心理学」という本には、人の行動やその心理についてたくさんの事例が書かれています。興味のある方は是非読んでみてください。